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翻訳者インタビュー 第一線でご活躍されている翻訳者の「仕事」「自分らしい生き方」
「プライベート」など、生の声をご紹介します。

Vol.26 英語が好き

第 6回 櫻田 由紀さん  Yuki Sakurada
今回ご登場のフリーランス翻訳者櫻田由紀さんは、在宅翻訳の前のお仕事がフランチャイズチェーン店経営だったという、ユニークなキャリアの持ち主。英語との出会いは中学1年生と決して早いスタートではなかったようです。「今やりたいことをやろう」というシンプルな思いで「好き」を仕事にしてしまった櫻田さんの自然体インタビューです。


プロフィール  櫻田 由紀さん Yuki Sakurada

関西外語大学外国語学部卒業、交換留学で米国大学でも学位取得。社内翻訳者としてキャリアを積む中、ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在。結婚・出産にて一時子育てに専念。高齢者専門宅配業のFCチェーン店でのオーナー経験後、本格的にフリーランスの翻訳業を開始。子供との時間を大切にする1児の母。

Q. 語学に興味をもったきっかけは?
中学1年生で初めて英語を学び始めましたので、ごく一般的なスタートだったと思います。しかし1学期の途中から体調を崩して半年ほど入院をすることになり、英語の基礎のところで授業を受けられない状態になりました。その時に担当医の先生が、これでは勉強が遅れるから入院中自分で勉強を進めてごらんと言ってくださり、自分で計画を立てて教科書やワークブックを勉強しました。退院して学校に復帰するとすぐに期末テストというタイミングだったのですが、そこで英語のテストでクラス1位を取ってしまいました!それで「私、英語できるかしら?!」と英語に対して良いイメージができてしまって。それが今につながる英語のきっかけといえるかもしれません。今在宅で翻訳をしていますが、自分のペースでやっていくことも昔から性にあっていたのかもしれません。
その中学の英語の教科書に通訳の仕事について書いてあって、当時は漠然と通訳に憧れました。しかし、だんだんそれが難しい仕事であることが分かり、まずは企業に就職して英語を使える仕事をしようと。その先の仕事として通訳のことも考えていました。大学では実践的な英語を学べる英米語学科に進学しました。
Q. その後アメリカの大学に進学しますね。
この大学を希望した理由の一つでもあるのですが、日本の大学とアメリカの大学で単位互換制度があり、日本で3年生の夏を終えた後、サウスカロライナの大学に2年間留学しました。このアメリカの大学は日本人が一人もいなくて、田舎で車もなかったので遊びに行くといえば友達にちょこちょこついていくくらいで...。でも宿題が多くとにかく勉強が大変で、本当は遊びにいくどころではなかったのです。まずは卒業することを目標に2年間やり通しました。無事学位を取得した後、日本の大学に戻って不足単位分を履修し、日本の大学でも学位を無事取得することができました。
Q. 卒業後、いよいよ英語を使った仕事に?
最初の会社は入社後2か月くらいしか勤めませんでした。その後英語関係の仕事をしたくて次の企業に移り、ここで翻訳の仕事に携わることになりました。営業活動レポートの日英・英日翻訳の仕事です。上司の方がとても親切で、特に翻訳についてはいろいろと教えてくださいましたのでとてもいい環境で仕事をすることができました。
今の在宅翻訳と比べてみると、インハウスでは共に働いている仲間がいるので、自分だけの世界に閉じこもることがないというのが大きなメリットだと思います。分らない時には上司や社内の人に聞けましたので安心でした。これは私の場合なのですが、仕事のない時の時間の使い方で困ることがありました。この時には1週間スパンでの仕事でしたので、月曜日から取り掛かった仕事が大抵金曜日のお昼くらいには終わってしまって。他業務はさせてもらえなかったので、なんとなくぼんやりするしかなく、まだインターネットも社内で自由に使える時代ではなかったので、正直困りました。
Q. 次の転職の前には、オーストラリアに行かれていますね。
ワーキングホリデーです。なぜだか行きたくなったんです、その時オーストラリアに。違うところが見たいという思いだけでした。シドニーやエアーズロック、パースでガイドや簡単な通訳・翻訳をしていました。結局1年半滞在して日本に帰国し、またインハウス翻訳の仕事につきました。ここはISOやIECに関連する団体で主に英語でのコレスポンデンス業務やビジネス文書(マニュアル、議事録など)の翻訳業務がメインでした。アテンド通訳や会議での逐次通訳もここで初めて経験しました。実際に通訳の勉強はしたことはなく、通訳の仕事がある前の日の晩はプレッシャーで眠れなくて...。ここで通訳・翻訳を両方やらせていただいて、自分にはじっくり取り組める翻訳の方が向いていると思いました。通訳のように、その一瞬一瞬で最高のパフォーマンスを出すという仕事よりは、自分の納得のいくところまで取り組んで納品できる仕事の方が性格的に合っていると思いました。
Q. その後、在宅翻訳にシフトするのですか?
結婚を機に先の団体を退職しまして、その後前職での元同僚が勤める会社から直接翻訳のお仕事をいただきました。これが在宅翻訳での最初の仕事になりましたが、その元同僚の異動に伴いこの仕事も終わってしました。その後、数社のエージェントの翻訳トライアルを受けたのですが、ことごとく落ちてしまいまして...。厳しいフィードバックが返ってきたこともあり、フリーランスとして翻訳をするにはまだ実力不足なんだと思い、その後翻訳を仕事にすることはしばらく考えず、家庭に入って子育てに専念する期間が1年以上続きました。そのうちに子供も少し大きくなって、また仕事をしたい、何か新しいこともしてみたいといろいろと情報を集めているうちに、フランチャイズで独立・開業にチャレンジしてみようというアイデアにたどり着きました。高齢者専門の宅配弁当サービスのお店です。説明会を聞きに行って「よし、やろう!」ということになりました。私がオーナーとしてお店をやることになったんです。主人は1年間会社を休職して立ち上げを手伝ってくれましたが、ある程度軌道に乗ってからは従業員を雇い、自分で経営に携わりました。
Q. ずいぶん思い切った転換ですね!翻訳のことはもう諦めたのでしょうか?
確かにトライアルに落ちたことは悔しかったですし、やはり心の片隅には英語をやりたいという気持ちがずっとありました。でも、フランチャイズ運営のような新しいチャレンジはきっと若いうちじゃないと体力的にできないと思って...、それで今だと。従業員もいて人材管理にも気を遣いましたし、この事業に費やした2年半は本当に勉強になり充実していました。この頃の経験が今の翻訳業にダイレクトに活かされていることはないかもしれませんが、最終責任者としてクレームに対応したり、飛び込み営業なども経験したので、怖いものがなくなったような気がします。以前は心配性だったのですが、計画性を持つことと同時に、一見無理に思えることも考えてできると判断すれば、どんどん前に進めるようになりました。
Q. 店を終えられた後、翻訳の仕事にまたチャレンジしてみようと?
はい、お店を他のオーナーに譲ることになり、この頃にテンナインを知りました。以前の翻訳トライアルから数年のブランクがあり少し不安でしたが、以前に受けたところは電機・通信・機械などテクニカルな専門性の高い分野が多くて、今思えば分野違いを無視して受けていたような気がします。幸い数社トライアルに合格しお仕事をいただくようになりましたが、実際自分にはそれほど専門分野と呼べるものがないので、今法律関係の翻訳を勉強しながら専門分野を持てるよう努力しています。特に法律に興味を持っていたわけでもないのですが、翻訳講座を調べている中である先生(翻訳家)を知り、たまたま選べる講座が法律関係だったというだけなんです。でもやってみるとパズルみたいで、難解な文が解けたときには爽快です。長い目でみて自分の専門分野になればいいなと思っています。
Q. 在宅翻訳者になって良かったことは何ですか?
働くスタイルを自分で選べることですね。これが一番です。また会社勤めに戻りたいかと聞かれると、正直迷いますね。小学4年の娘がいますが、フリーランスですと子供の学校行事に合わせてあげられますし、在宅ですから子供が帰ってきたときに「お帰り」「ただいま」の会話ができることがいいですね。今日は階段を上がってくる足音がゆっくりだな...とか。なるべくそういう成長をそばで見ていてあげたいと思っています。
あとは一社に属しているよりも圧倒的に様々な内容や分野の情報に触れることができるのは魅力です。ずっと英語が好きだったので、1日中英語と対峙していても苦ではないですし。今勉強している法律翻訳講座では大量の法令文を読みます。きっと英日・日英どちらでもそうだと思いますが、「覚える」というよりは「表現が自然と出てくる」までとにかく文章を読み込んで体に染み込ませることは有効な学習方法ではないかと思います。現在、翻訳チェッカーの仕事もしていますが、チェック作業をし終えた後で翻訳に取り掛かると、言葉のアウトプットが非常にスムーズなんです。きっと英語漬けになって、脳が自然と翻訳モードになっているのかもしれません。
Q. これから翻訳者を目指す方へのアドバイスをお願いします。
私の場合、ただ英語と本が好きだったことが翻訳業への道を開いてくれたと思っています。大学生の時、近くの図書館にアガサ・クリスティの原書が揃っていて、夏休みには1日中読んでいました。実際に理解していたかというと完全には理解できず、かなり抜けた状態で読み進めいてくのですが、読み終えるころに話がなんとなく分かってきて、それが楽しくて嬉しくてずっと読んでいました。結局一夏で30冊近く原書を読みました。
また、高校生の頃にはFEN(極東放送、現AFN)のラジオを1日中流していました。何を言っているのかは分らなかったのですが、ずっと耳から入ってくる状態がまた心地よくて。たぶん、「翻訳・通訳」の仕事が好きというよりは「英語」が好きなのだと思います。英語を使える仕事で、こつこつ調べながら本をたくさん読むような感覚でできる仕事、となるとちょうど翻訳の仕事がぴったりはまったのだと思います。
また、私が家で仕事をする中で唯一決めているルールが17~21時はパソコンを閉じておく、ということです。この時間は子供と過ごす時間です。急な仕事が入ってしまうこともありますが、基本的にはこの時間を確保できるように、他の時間で効率よく仕事を溜めないで片づけるようにしています。子供が急に熱を出すこともありますし、在宅だからといってだらだら仕事をすることはできないですね。
在宅ですと家にこもりがちになってストレスが溜まるという話も聞きますが、私の場合は子供と夜に話をするだけでもストレスはなくなりますね。あと、いつも行く近所の喫茶店でコーヒーを飲みながら周囲の会話に耳を傾けてみたりとか、ゆっくり本を読んだりとか。それだけで気分転換になります。そう、あとは週に1回、コーラスサークルで歌っています。大きな声を出してストレス発散!やっぱりこういうバランスがどこかで必要かもしれませんね。
【櫻田さんお奨めの翻訳参考本】
『日本語の作文技術』
(本多勝一 著、出版社: 朝日文庫)
櫻田さんコメント:句読点の打ち方、節の並べ方ひとつで文章や読み易さが変わってきます。翻訳された日本語をいかに読みやすくするかという点でこの本はとても役に立ちます。今私がバイブルにしている本です。


編集後記
とにかく明るくて笑顔が素敵な方でした!「好きを仕事にする」は誰もが憧れるものですが、あまり力みすぎては前に進まないのかもしれないですね。「ただ好きだから」がずっと続いて、いろんなことやって、そして今がある。近所の素敵なお姉さんに楽しくお話をお聞きしたようなインタビューでした。こんなお姉さん、欲しかったなぁ!



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